「軍師殿は、今幸せですか?」
「ええ?……それは、まあ、お陰様で……」
趙雲は結婚願望も無いし、結婚に理想も抱いてない。
とは言えこの時代、結婚はして当然……というものだから、願望やら理想以前の話なのかもしれないが……。
しかし、この年になって独身男の趙雲としては、やはり気になるもの。
「家族がいるというのは、やはり良いものですよ」
諸葛亮はまっすぐ前を見据えたまま、そう言った。
諸葛亮にしては、なんとなく声に感情が籠っている気がした。
「そうですか……?」
諸葛亮も家では普通に笑ったり、のんびりしたりするのだろうか。
あまりそんな諸葛亮は想像出来ない。
諸葛亮の妻なら、いつもそんな姿が見れるのだろうか……。
「愛しておられますか?」
「えっ?」
「奥方を、愛しておられますか?」
「え、なんですか、急に」
前を見ていた諸葛亮も、この時ばかりは趙雲の方を振り替えって、目をしばたかせていた。
こんな事急に訊かれては、大抵の男は戸惑うだろう。
尋ねた方は呑気なもので、柄にもなく慌てている諸葛亮を見て、ちょっと可愛いな等と考えていた。
「さ、さぁ……。私には、良く分かりません」
少し間をおいて、諸葛亮は答えた。
存外真剣な声色。
「分からない?」
「分かりません」
意外な答えだった。
恥ずかし紛れに言ってるわけではないようだ。
諸葛亮は妻以外には一人も妾を迎えず、妻を大切にしているという愛妻家だと聞いていたのに。
質問をふっかけておきながら、趙雲は諸葛亮の答えに戸惑った。
「妻の事は大切に思ってますし、守りたいとも思います。尊敬もしています」
諸葛亮の妻は大変聡明な女性だという話だから、そういう意味で尊敬しているのだろう。
「かけがえの無い、家族なんですけど……」
諸葛亮は再び、視線を進行方向に返す。
しかし先程より幾分か、顔は伏せられている。
「…………」
それだけ慈しんでいるのは、愛しているとは言えないのだろうか?
妻という存在は、愛の対象というより家族という対象になってしまうものなのだろうか。
結婚経験の無い趙雲には良く分からない。
「そうなのですか……」
「そうですね……」
諸葛亮がふと、立ち止まった。
見渡せば、いつの間にやら、本陣の西端まで来ていた。
ここには兵糧が管理されている。
諸葛亮の幕舎も、ここにある。
「何故その様な事を?」
諸葛亮の視線が、再び趙雲に向き直った。
じっと、多少訝る様な目付きで、趙雲を見ている。
「えっ?」
「いや、言われてみて私も気付いたので」
諸葛亮はさっと瞳に影を落として、ゆっくりと視線を外した。
どこを見るでもなく、虚空に視線を泳がせている。
「私は妻を愛していないんでしょうか……」
「そ、そんな事は無いと思いますよ。そんなに大切に思われているのに……」
「…………」
諸葛亮が再び、趙雲に視線を戻した。
じっとみつめている。
何の感情も無い目だったが、趙雲はドキリとした。
「趙将軍」
「は、はい」
「良い伴侶が得られると良いですね」
「え、はあ……そうですな」
「では私は幕舎に戻りますので。失礼します」
目の前の幕舎が、諸葛亮の幕舎であるらしい。
軍の動向を担う軍師の幕舎にしては、随分と端に位置している。
諸葛亮は兵糧の管理もしているため、諸葛亮自身が望んでいるのだそうだ。
大抵いつも、諸葛亮の幕舎はこんな場所にある。
諸葛亮は自身の幕舎の中へ、ゆっくりと消えて行った。
「………………」
なんとなく、その背中が淋しい気がするのは、趙雲の気のせいだろうか。
諸葛亮と話せたのは良かったが、話したら話したで益々分からない部分も増えていく気がする。
やはり不思議な人だ、と趙雲は思う。
また諸葛亮と話したい……そう思いながら、趙雲は自分の持ち場へ帰っていった。
〔続〕
趙雲はイケメソで背が高くて、ガッシリ筋肉質みたいな……あと笑顔が素敵です(笑)
そんなわけで女性にもてますし、それを自覚しています
趙雲は独身…という設定にするのが多いと思うんですが、やっぱり独身にしておきました
孔明さんは奥さんの黄夫人と二人暮らし(+使用人とか)です
我が家の黄夫人は普通に醜女設定ですw
でも孔明は別にそれで負い目を感じてるわけではありませんが、あまり奥さんを周りに紹介していない
単に家族を会社の人に紹介するのが面倒…って感覚なんだと思います
必要も無いし