夜が明けた。
昨夜はあまり眠れなかった。
あまりに気になって、いっそ兄上の部屋の様子を見に行こうか……とも思ったが、もしとんでもない事になっていたらもっと眠れない気がして、やめた。
しかし結局ゆっくり朝まで床の中にいる気にもならず、意味もなく周辺の廊下をウロウロしていた。
「……若様?」
「ふあっ!?」
あまりに周りを気にしなさすぎて、近くに人がいたのに全く気付いていなかった。
思わず変な声が出た。
「も、申し訳ありませ……」
後ろにいたのは周泰だった。
「あ、え、周泰……?」
「驚かせてしまって……その……」
周泰は俯いて、大きな体を小さく縮こませている。
「ああ、いや、ごめん、こっちこそ……」
「は、はい……」
予想外に驚かせてしまったと思っているのだろう。
周泰を随分と恐縮させてしまった。
「あの、若様はこの様な所で何を?」
「あ、私!?それは……えと、ちょっと散歩がしたくて……」
「散歩……ですか」
我ながら下手な嘘だったと後悔する。
屋敷の廊下をウロウロするだけの散歩がどの世界にあるというのか。
周泰も口とは裏腹に、全く信じていないという目をしている。
「し、周泰こそ、こんな朝早くにどうしたのだ」
「私は殿に昨日の件の報告に」
昨日の件とはつまり、山越討伐のことである。
事後処理かなんかの簡単な報告だろう。
「周瑜様もご一緒と言うことなので、二人が揃われている時の方が都合が良いかと」
と、なると……。
「ま、まさか兄上の部屋に行くつもりなのか!?」
「あ、え、はい……そうでございますが」
「それは駄目だっ」
「えっ!?」
まだ朝早い。
二人はまだ床の中かもしれない。
周泰を驚かせては可哀想だ。
――いや、待てよ?
これは部屋の様子をうかがう好機かもしれない。
「むむむ」
「あの、若様。今は都合が悪いということならば、私は出直しますが」
周泰が不安そうな顔で訊いてきた。
傷だらけの強面なわりに、困った顔は妙に可愛い所がある。
私は周泰のこの表情が好きなのだが、今はそれはおいておこう。
「あー……まだ二人は起きてないかもしれないと思って」
「ああ、ならば出直した方が」
「だからこそ行くのだ!」
「えぇっ!?」
思い立ったが吉日、この機に乗じて行ってしまおう!
それに、一人よりも二人の方が心強い。