「行くとはどこにですか?このような早くから」
「だから、兄上の……」
「伯符の?」
「って、周瑜っ!?」
いつの間にか、廊下の向こうから周瑜がこちらへ近付いて来ているではないか。
「おはようございます、弟君」
「ああ、おはよう周瑜」
「おはようございます周瑜様」
「周泰もいたのか、おはよう」
周瑜は頭を下げながら私の元へ歩み寄って来た。
なんとなく気だるげな様子で、眠そうな感じもする。
髪や服が軽く乱れているのはいつもの周瑜らしくなくて、なんだかドキドキする。
なんというか、妙に色っぽい。
朝から目に毒だ。
と言いつつ、ちらちらと気付かれないように何度も見る。
「周瑜様、殿は……」
「伯符か?まだ床の中でぐっすりだ。全く幸せそうな顔をして寝ている。こちらの気も知らないで……」
そう言って周瑜は目頭を押さえた。
「ではまだ起きないでしょうか」
「恐らく」
「へ、部屋で待たせてもらってはどうだ!?」
「「え?」」
周瑜と周泰が声を揃えて返した。
「いやそんな、殿のご寝所になど入れませぬ」
周泰がぶんぶんと手を振って拒否しているが、周泰の意見はとりあえず無視しておく。
「だ、駄目かな周瑜」
ちらりとねだるように周瑜を見やる。
周瑜は険しい顔で思案していて、せっかくの私のおねだりは見ていなかったらしい。
「……やめた方が良いでしょう」
「なぜ?」
「その、臭いが……」
臭い……。
そうか、臭いか……。
「換気はしたのですが、暫くは……」
周瑜は申し訳なさそうに、且つ少し恥ずかしそうに言った。
無理もない。
私でも嫌だろうからな。
すると私達の会話を聞いていた周泰が「ああ」と言って、ワケ知り顔をしながら会話に入ってきた。
「昨晩は夜通し……というわけですか」
なっ……なんてことを言い出すんだ、周泰!!
私はそんな将にお前を育てた覚えはないぞ!!
「そうなのだ。伯符の奴、昨晩に限ってなかなかしつこくてな」
「それはそれは」
笑ってる場合じゃないぞ周泰!
「では、昨日も?」
「ん……、飽きもせず同じ所ばかりを攻めてくるんだ、伯符の奴」
ちょ、周瑜。
「毎回同じ様では流石に私も嫌になるなぁ」
「殿に言って差し上げたらどうですか」
「言っても聞かぬだろう。昨夜だって男は攻めあるのみだとか言って……」
「ははは、お疲れ様です」
なにが「ははは」だ!
「周泰」
「なんでしょうか」
「……次は君も一緒にどうかな」
「えっ」
「えええっ」
一緒にって……三人で!?
そんなのアリなのか!?
世の中そんなに乱れているのか!?
「私は構いませんが。殿は、良いのでしょうか」
「良いんじゃないかな。私としては、いてくれると嬉しいが」
「では、次に機会がありましたら」
誘う周瑜も周瑜だが、受ける周泰も周泰だ。
「周泰、君はいけるクチか?」
「ほどほどには」
「ふふ、期待しておこう」
なにこれどうしようこの展開。
周瑜は兄上と……じゃなくても良いのか!?
だったら、だったら私だってっ……。
「周瑜!!」
「はい、なんでございますか?……顔が赤いようですが、大丈夫ですか?」
「わ、私もっ」
「?」
声が震える。
胸が高鳴る。
「私も一緒には……ダメか!?」
「…………」
てっきり快諾されるとばかり思っていたが、予想に反して周瑜は困ったような表情を浮かべた。
「ダメ、なの……か?」
周泰は良いのに……何故、なぜ私はダメなんだ。
周瑜は私の沈んだ顔を見て、言葉を続けた。
諭すような優しい声で。
「そうですね、もう少し大人になられたら……」
周瑜は美しく、そしてどこか妖艶な笑みを浮かべながら囁いた。
「その時はこの周瑜がお相手して差し上げましょう」
「ッ……!!」
大人、に、なったら……。
「……周瑜様、呼んでおられませんか?」
「え?」
「こうきーん……水くれ……」
「起きたようだな……やれやれ、全く手のかかるお子様だ」
「はは、江東の小覇王がお子様とは」
「お子様の相手をするのも立派な仕事だからな。弟君、それでは失礼します。周泰は後でもう一度部屋に来てくれ」
「了解しました」
「こうきーん……」
「はいはい、今行く」
「なんだかんだ言っても、やはり殿といる時が一番楽しそうですね。若様もそう思いませんか?……若様?」
早く大人になりたいなぁ……。