若様は思春期 若様は思春期−3


「行くとはどこにですか?このような早くから」

「だから、兄上の……」

「伯符の?」

「って、周瑜っ!?」

いつの間にか、廊下の向こうから周瑜がこちらへ近付いて来ているではないか。

「おはようございます、弟君」

「ああ、おはよう周瑜」

「おはようございます周瑜様」

「周泰もいたのか、おはよう」

周瑜は頭を下げながら私の元へ歩み寄って来た。
なんとなく気だるげな様子で、眠そうな感じもする。
髪や服が軽く乱れているのはいつもの周瑜らしくなくて、なんだかドキドキする。
なんというか、妙に色っぽい。
朝から目に毒だ。
と言いつつ、ちらちらと気付かれないように何度も見る。

「周瑜様、殿は……」

「伯符か?まだ床の中でぐっすりだ。全く幸せそうな顔をして寝ている。こちらの気も知らないで……」

そう言って周瑜は目頭を押さえた。

「ではまだ起きないでしょうか」

「恐らく」

「へ、部屋で待たせてもらってはどうだ!?」

「「え?」」

周瑜と周泰が声を揃えて返した。

「いやそんな、殿のご寝所になど入れませぬ」

周泰がぶんぶんと手を振って拒否しているが、周泰の意見はとりあえず無視しておく。

「だ、駄目かな周瑜」

ちらりとねだるように周瑜を見やる。
周瑜は険しい顔で思案していて、せっかくの私のおねだりは見ていなかったらしい。

「……やめた方が良いでしょう」

「なぜ?」

「その、臭いが……」

臭い……。
そうか、臭いか……。

「換気はしたのですが、暫くは……」

周瑜は申し訳なさそうに、且つ少し恥ずかしそうに言った。
無理もない。
私でも嫌だろうからな。
すると私達の会話を聞いていた周泰が「ああ」と言って、ワケ知り顔をしながら会話に入ってきた。

「昨晩は夜通し……というわけですか」

なっ……なんてことを言い出すんだ、周泰!!
私はそんな将にお前を育てた覚えはないぞ!!

「そうなのだ。伯符の奴、昨晩に限ってなかなかしつこくてな」

「それはそれは」

笑ってる場合じゃないぞ周泰!

「では、昨日も?」

「ん……、飽きもせず同じ所ばかりを攻めてくるんだ、伯符の奴」

ちょ、周瑜。

「毎回同じ様では流石に私も嫌になるなぁ」

「殿に言って差し上げたらどうですか」

「言っても聞かぬだろう。昨夜だって男は攻めあるのみだとか言って……」

「ははは、お疲れ様です」

なにが「ははは」だ!

「周泰」

「なんでしょうか」

「……次は君も一緒にどうかな」

「えっ」

「えええっ」

一緒にって……三人で!?
そんなのアリなのか!?
世の中そんなに乱れているのか!?

「私は構いませんが。殿は、良いのでしょうか」

「良いんじゃないかな。私としては、いてくれると嬉しいが」

「では、次に機会がありましたら」

誘う周瑜も周瑜だが、受ける周泰も周泰だ。

「周泰、君はいけるクチか?」

「ほどほどには」

「ふふ、期待しておこう」

なにこれどうしようこの展開。
周瑜は兄上と……じゃなくても良いのか!?
だったら、だったら私だってっ……。

「周瑜!!」

「はい、なんでございますか?……顔が赤いようですが、大丈夫ですか?」

「わ、私もっ」

「?」

声が震える。
胸が高鳴る。

「私も一緒には……ダメか!?」

「…………」

てっきり快諾されるとばかり思っていたが、予想に反して周瑜は困ったような表情を浮かべた。

「ダメ、なの……か?」

周泰は良いのに……何故、なぜ私はダメなんだ。
周瑜は私の沈んだ顔を見て、言葉を続けた。
諭すような優しい声で。

「そうですね、もう少し大人になられたら……」

周瑜は美しく、そしてどこか妖艶な笑みを浮かべながら囁いた。

「その時はこの周瑜がお相手して差し上げましょう」

「ッ……!!」

大人、に、なったら……。

「……周瑜様、呼んでおられませんか?」

「え?」

「こうきーん……水くれ……」

「起きたようだな……やれやれ、全く手のかかるお子様だ」

「はは、江東の小覇王がお子様とは」

「お子様の相手をするのも立派な仕事だからな。弟君、それでは失礼します。周泰は後でもう一度部屋に来てくれ」

「了解しました」

「こうきーん……」

「はいはい、今行く」

「なんだかんだ言っても、やはり殿といる時が一番楽しそうですね。若様もそう思いませんか?……若様?」


早く大人になりたいなぁ……。


Back-- Novel Top-- Next